ムー大陸

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以下では「ムー大陸」についてまず簡単に説明しています。

 アトランティスの太平洋版とでもいうべきなのが、ムー大陸。英軍大佐を自称した米国の作家ジェームズ・チャーチワード(James Churchward 1851~1936)が、インドで目にしたという粘土板文書をはじめとした古代の伝承をもとに、『失われたムー大陸』(1926、1931)等の著作で存在を主張しました。彼によるとムーは太平洋上にあって、世界の諸文明の起源である超古代文明と「ムー帝国」がそこに繁栄していました。またアトランティスもムーの植民地だったといいます。ムー大陸はアトランティスと同じように12,000年ほど前、大災害によって海中に没したとされますが…。

 ムー大陸については、日本でこんな逸話があります。ムー大陸について米国人が論じた書が、太平洋戦争中に訳され出版されたのです。軍部の高官もからんで、「日本は太平洋に存在した太古の陸地、ムー大陸と起源においてつながりを有しており、ムー大陸に栄えた帝国の支配権や威光を受け継ぐのは日本である」と唱える者たちが遂行したことでした。米国と日本とが戦争中、敵国の書をわざわざ翻訳していたことにまず驚かずにいられません。関わった日本人の主張を聞くとなおさらです。そうした「奇説」は批判もされ、表立っては顧みられなくなったのですけれども、そこにはロマンとはまた違った何かも感じられます。当時の関係者が取り憑かれることになった、何かが。

チャーチワードの邦訳書『南洋諸島の古代文化』(仲木貞一訳、岡倉書房、1942)掲載地図

 またその後、1960年代末から1970年代には、チャーチワードのムー大陸についての著書が「大陸書房」から邦訳され(今は無きその出版社の名称はムー大陸から取ったのだそうです)、ブームを巻き起こしたこともありました。管理人は1975年生まれで当時のブームを実体験した記憶はないのですが、ちょっと上の世代の方々は「あれは本当に流行ってた!」と、よく覚えておいでのようです。

 そもそも、こうした「失われた大陸」とは何なのか。果たして実在したのか。魔力とでも表現したくなる、その魅力の源は何なのでしょう。そして、西洋由来の神話・伝説が、なぜ日本にまで影響を及ぼすことになったのでしょうか。それに、ある時代にブームとなる背景とは?受け継がれ続ける神話(的物語・イメージ)の一環として、こうした観点からムー大陸の話もしていきたいと思っています。

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