ハデスとペルセフォネ(2)
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今回はハデスのイメージと継承について、先にまとめておきたいと思います。
ハデス(もしくはアイデス)はゼウスとポセイドンと兄弟で、支配領域をくじで決めた結果、死者の国、冥界の神になったと伝えられています。死者の国は地下にあるとイメージされたので、天にいると想像された主な神々、オリュンポスの12神に入っていません。冥界というと暗くネガティブな感じがするかもしれないですが、そこを支配するハデスはキリスト教の悪魔のようなものではなく、正しい神で、閻魔大王のような存在といえます。お若い方が「ハデスはフィクション作品でよく悪役にされているけれど、もとのギリシア神話を読んだらそんなに悪いやつじゃないじゃん」と感想を述べていたのを先日の遠隔講演の際にお聞きしました。
実りなどが地中からもたらされることから、ハデスは「富める者」を意味するプルートーンという別名をもっています。ラテン語ではプルートー、もしくは「富める者」を訳してディース・パテルと呼ばれました。
ラテン語名に由来して冥王星は「プルート」といい、その冥王星が1930年に発見、命名されたことにちなんで名づけられたのが、ディズニーのミッキーマウスの飼い犬、プルート(初登場が1931年)。ディズニーといえばアニメ映画『ヘラクレス』にもハデスが登場しますが、悪役(ヴィラン)なのだけれどもコミカルにも描かれたことで、一部の人気を得てもいます。
また、元素名プルトニウムも冥王星から名づけられました。
新約聖書では、ハデスの名は死者が行く場所の名です。このようにハデス/プルートーは、どうしても死をもたらす恐ろしさを感じさせるのか、そういったイメージのキャラクター名によく用いられ続けています(よく悪役にされるという事とつながるわけです)。たとえば手塚治虫の『鉄腕アトム』の一編、「地上最大のロボット」に登場する恐ろしい破壊能力をもったロボットの名前が「プルート」。そしてこのエピソードを、手塚ファンの漫画家、浦沢直樹がリメイクした作品が『PLUTO』でした。また先述の放射性物質プルトニウムの名は、死者の国のイメージとは無関係にあくまで冥王星の名からつけられたのですが、結果的に恐ろしい力をもつイメージに重なる名称といえるのではないでしょうか。