アテナ・ミネルヴァ―戦いと知恵の女神(2)

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知恵の女神

アテナは知恵の女神でもありました。その性質は女神の誕生に関係しています。

アテナが生まれる前、ゼウスは天空神ウラノスと大地の女神ガイアから予言を授かっていました。ゼウスと、最初の妻の女神メティス(「思慮」の意)との間に生まれる子が、最高神ゼウスの地位を奪うというのです。

それを恐れたゼウスは、身ごもったメティスをなんと丸飲み!その後ゼウスは額に激しい痛みを覚えたので、鍛冶の神ヘファイストスがゼウスの額を割ると、そこからアテナが武装した姿で誕生!

つまりアテナは「思慮」の化身として、知恵を司るのです。また、生みの母がいないアテナは、ゼウスに忠実な娘でもあります。

誕生譚が荒唐無稽で、このような合理的に説明しがたい話こそ神話の魅力と捉える向きもあるかと思いますが、「男が単独で、従順な娘を生み出す」という話は、命を生み出す力は女性だけのものではないとうったえながら、父娘の結びつきを強調・正当化しているという、男性中心の世界観の暗示として解釈できるかもしれません。

さて知恵の女神でもあるアテナ/ミネルウァは、出版社など、知的産業に関わるものの名前にもなっています。また、2世紀前半のローマ皇帝で、ギリシア文化を好んだハドリアヌスが、「アテナ神殿」の意の学問研究機関アテナイオンをローマに設立したことから、英語のアテネウム Atheneum、フランス語のアテネ Athénée など、研究機関や図書館、学校を意味する言葉につながっています。

古代アテネの銀貨に描かれた、アテナの象徴としてのフクロウ(Public Domain via Wikimedia Commons)

アテナの聖鳥フクロウも、知恵の象徴。夜行性のフクロウは「人間には見えていないものが見える」という畏敬の念からか、賢い鳥であるとのイメージがありました。古代アテネの硬貨にフクロウが描かれていたのですが、現代のギリシアで造られたユーロ硬貨にもそのデザインを模したものがあります。ユーロ硬貨の表側は共通デザインですが、裏は各国ごとに異なっていて、その国に縁の深いものが描かれています。旅行などの際にユーロ硬貨を手にしたとき観察してみましょう。→続く

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