アポロン/アポロ 文化・予言・失恋の青年神(1)

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文化の神、そして一方…

アポロンはゼウスと女神レト(ティタン神族のコイオスとフォイベの娘)の子で、女神アルテミスと双生の男性神。肉体美を誇る青年の姿でイメージされました。弓を得意とし、音楽の神でもあることから竪琴を持って描かれます。また月桂樹の冠も彼の象徴。

誕生の地とされたのが、エーゲ海キュクラデス諸島の中心にあるデロス島。古くより聖地とされていて、神殿跡などの遺跡が世界遺産となっている。

アポロンは、ときに太陽神ヘリオスと同一視される華やかな太陽の神でもあり、誕生地デロスは最も晴れ渡る島といわれています。またアポロンの添え名が「フォイボス」で、「輝くもの」の意。

ちなみに、このデロス島のすぐ東にあるのがリゾート地として有名なミコノス島。現在は無人島であるデロスには、ミコノス島から船で訪れることができます。

アポロンは、芸術、音楽、医術、哲学など、文化的な領域を司る神であり、学芸を発展させた古代ギリシアを特に象徴する神といえるでしょう。こうした性質から、学芸の女神ムーサたち(別項目で解説予定)と共に描かれることも多いのです。

一方、得意の矢で疫病を人々にもたらす恐ろしい面もありました(疫病を、どこからか突然飛んでくる矢に重ねるイメージは後世にも見られます)。こうした性質こそ本来のアポロンのものだったのが、ギリシア文化の発展と共に、文化的で明るいイメージに変化していったのではないかとも推測されているのです。

ローマでは似たような神がいなかったからか、「アポロ」というほぼそのままの名前で呼ばれ、後世ではキリストと同一視されることもあったほど西洋文化において重視されてきました。そのため、アポロン/アポロの名が受け継がれている例にはこと欠きません。有名なところでは、アメリカのかつての宇宙開発計画「アポロ計画」。そしてそれは、宇宙船の形をイメージした日本の「アポロ」というチョコレートの商品名にもつながっています。

アポロンとキタラ

音楽の神でもあるアポロンは、よく竪琴を持った姿で描かれます。古代の竪琴には2種類あり、共に現代の言葉につながっているので紹介しておきましょう。

まず、音楽家が用いたのがキタラで、これは木製または金属製の共鳴胴から延びた腕の先に横木を渡し、弦を張ったもの。このキタラ cithara がアラビア語に入って gitara となり、中世にイスラム教徒がイベリア半島に進出していたことから、それがスペイン語に入って guitarra になって、そこから英語のギター guitar という呼び名につながっています。またラテン語を経由してシターという(cithare、チター、ツィターとも)楽器の名にもなっているのです。

そして家庭用がリュラ。亀の甲羅を共鳴胴とし、腕木は角製または木製でした。英語やフランス語で弦楽器をいう lyre はここから。別項目で取り上げる神ヘルメスが発明し、アポロンが譲り受けたとされます。→アポロンの話は続く…

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