キュベレ―東方から伝来した女神
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オリュンポス12神じゃないけれど、重要な神々についてまとめていこうシリーズ。
死と再生の秘儀
キュベレは、もともと小アジア中西部フリュギアで崇拝されていた女神。豊穣多産を司る大地の女神であるほか、予言や山野の動物の守護など様々な性質を帯びて、ギリシア・ローマに信仰が広まりました。ローマではマグナ・マテル Magna Mater(大いなる母)と呼ばれる神格と同一視されます。
キュベレへの変わらぬ愛を誓ったアッティスという美少年がいたのですが、アッティスがあるニンフに恋したことにキュベレが怒り、ニンフの宿る木を切り倒してしまったため、アッティスは狂気に陥り、なんと自ら去勢して死んでしまいました(オウィディウス『祭暦』4.222以下)。
しかしその死を嘆いたキュベレが願ったところ、アッティスは松の木となり、流れた血からはスミレの花が咲いたのだとか。
キュベレを熱狂的に信仰する男たちのなかには、このアッティスの死と再生にあやかって儀式において去勢し、以後は女性として生きた者もいたといいます。
キュベレとそれに付随してアッティスを崇める儀式は、死と再生の秘儀として、俗世を離脱する狂乱を伴いおこなわれていたようです。
ローマから「シベーレス広場」へ
ローマは、今のスペインとポルトガルがあるイベリア半島を、ポエニ戦争を通じて領土とした。ローマはラテン人の都市で、彼らが話したのはラテン語。ローマの支配によってイベリア半島のラテン化が進んだわけなので、イタリアだけでなくスペインとポルトガルの言語・文化をラテン系と表現することがあり、そのスペインとポルトガルが植民したことから中南米を「ラテンアメリカ」というのです。
そして、古くからラテン文化の影響を受けたスペインの首都マドリードの中心にあるのが「シベーレス広場」。
シベーレスとはキュベレのスペイン語形。広場の噴水には、キュベレが二頭のライオンがひく車に乗っている彫刻があります。マドリードを本拠とする世界的に有名なサッカーチーム、レアル・マドリードが優勝を果たしたとき、ファンがこの広場に集まって歓喜するのを、古代の女神マグナ・マテル/キュベレが見守るのです。