ローマの起源(4) なぜトロイアとローマがつながった?

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トロイアからイタリアにやってきた者がローマの基礎を築いたというのは神話であり、歴史的事実ではありません。本来はギリシア人が語った物語の、しかもギリシアの敵方のトロイアの英雄が、なぜローマと結びつけられたのでしょうか。

これはウェルギリウスの気まぐれな創作ではなく、先行して文明を発展させたギリシアの神話的歴史に、ローマのそれをつなぎ合わせようという気運が背景にあったと考えるべきでしょう。

地中海世界を統一していくローマは、ギリシアもその支配下としましたが、ローマの詩人ホラティウスが「ローマは文化的にはギリシアに征服された」と評したように、ギリシア文化に強く影響を受けたのでした。

そこで、ローマはいわばギリシアと神話的世界観を共有することにして、そのなかで自国の歴史も語ろうとしたわけです。そしてローマの起源として選ばれたのが、ギリシアと対等に戦ったトロイアの血筋。

10年もの間ギリシアに屈しなかったトロイアには古来、肯定的なイメージもあります。現代でも「トロイア人のように戦う to fight like a Trojan」とは、忍耐強く何かを成し遂げるという良い意味の表現なのです。

また、アエネアスというキャラクターに関しても、トロイアから父を背負って逃れたといったエピソードが、父祖を敬うことを重んじたローマ人の気風・好みに合っていたのでしょう。

トロイアから渡ってきた英雄がローマの祖だというのは、我々から見れば「創作」。しかし当時の神話的世界観のもとでは、それは、自国がギリシアと同じくらいの伝統をもつ高貴な存在なのだというローマ人なりの宣言・宣伝だったといえる。のちの中世ヨーロッパの王侯貴族も、こうした神話的世界観の影響を受け、自らの起源をトロイアに遡って高貴な血筋を示そうとしたのです。

→ローマの起源についてはさらに、「ロムルスとレムスの伝説」に続きます。

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