オカルトにおけるレムリアとアトランティス(4)

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ブラヴァツキー夫人が語ったような「失われた大陸」イメージは、主に神智学系の者たちを経て継承されていきます。

英国の神智学者ウィリアム・スコット゠エリオットはその著書において(『アトランティスの物語』1896年、それにレムリアについての叙述を加えた『アトランティスと失われたレムリアの物語』1925年)、レムリアには爬虫類に近いような姿の人間たちが恐竜と共に住んでいたとか、アトランティスではすでに高度な科学技術が発達し、飛行機や空飛ぶ軍艦が存在していたと描写しました。レムリアの秘境のごときイメージや、アトランティスに優れた科学力があったというSF的イメージは、のちのフィクション作品に大きな影響を及ぼすことになります。

また、芸術の重視などが特徴的な教育思想、「シュタイナー教育」の由来として知られ、オーストリア・ドイツで活動した神秘思想家ルドルフ・シュタイナー(1861~1925)は、神智学に学んだもののブラヴァツキー以来の東洋重視から決別し、人間の内なる霊性の認識を重視する人智学協会を設立(1913)した人物ですが、彼も『レムリアとアトランティス』(1904)で、ブラヴァツキー夫人の根源人種論を継承して人類の発展を説いています。

アトランティスとの関わりが知られるエドガー・ケイシー(1877~1945)についても合わせて補足しておこうと思います。彼は、神智学の影響を受け、独特の「リーディング」(自らが催眠状態になって、対象者の前世等について情報を得ること)を行った人物。ケイシーもアトランティスを太古の実在した大陸とし、最初の人間が暮らしたのがアトランティスで、多くの現代人の前世がアトランティス人であったとも述べています。彼によればアトランティスは、霊力が封じ込められたクリスタルのエネルギーを活用するといった高度な科学技術を駆使していました。ラジオやテレビのようなものもすでに用いていたとされます。こうした描写が、スコット゠エリオットによって思い描かれたイメージと相まって、フィクション作品に受け継がれていくのです。数万年前から発展したアトランティスでしたが、12,000年前頃、クリスタルの力の悪用で起こった大地震によって大西洋に没しました。

そしてケイシーは、1968年か1969年にアトランティスの一部が浮上すると予言した逸話が有名です。これについても合わせて記しておきます。アメリカのフロリダ州マイアミから100キロほど東の沖に位置している、西インド諸島バハマ国の最西端に、ビミニ諸島があります。1968年、もともと動物学者で、古代文明に関心を抱いていたマンソン・ヴァレンタインが、北ビミニ島北西部の海岸から800メートルほど離れた海中において石畳が連なっているような「遺跡」を発見しました。深さ7メートルほどの海底に、5メートル四方のブロックが600メートル以上の長さに渡って存在していたのです。この「遺跡」は、まるで道のごとく見えることから「ビミニ・ロード」と呼ばれるようになり、失われた大陸の実在を信じる者やケイシー信奉者たちは、これこそ失われた文明の名残だと主張しました。

しかし、地質学者の調査によって、「石灰岩に自然の浸食作用で割れ目ができ石畳のように見えているのであり、人工物ではない」と結論づけられており、石に含まれていた貝殻の化学的分析からも、ビミニ・ロードが形成されたのは2000~3000年前と示されています(ビミニ・ロードについて詳しくはP・ジェイムズ、N・ソープ著『古代文明の謎はどこまで解けたか』Ⅲ、皆神龍太郎監修、福岡洋一訳、太田出版、2004年、第8章)。ケイシーの予言があったことでいっそう話題になったのですが、もともと予言では場所の言及はなされていませんでした。ケイシーはこれとは別に「ビミニ諸島はアトランティスの名残」と述べていたことがあったので、この二つの発言が結びつけられ誇張されたようなのです。また、こうした予言は、ちょっとでも近い内容があっただけでセンセーショナルですが、全く当たらずに注目されないものの方が数多くあります。それに、ケイシーの予言ゆえに、信奉者たちの関心がビミニ周辺でのアトランティス探索へと向いていた、という背景もあっての出来事でした。

ちなみにケイシーは、沈んでいくなかでも残ったアトランティス中心部の陸地を(アトランティスの主神がポセイドンであったことから)「ポセイディア」と言及しました。一方、英国の作家アルジャーノン・ブラックウッドは短編小説『砂』(1912)において同様の陸地を「ポセイドニス」と呼びました。その後、これらの名称がアトランティスの首都であるとかアトランティスの別名として挙げられることがあるのですが、そういった名はプラトンの叙述には登場してません。→さらに続く

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