オカルトにおけるレムリアとアトランティス(5)

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失われた大陸とオカルト信奉者とのつながりには、こんな例もあります。米国カリフォルニア州北部、先住民の聖地だったというシャスタ山に、レムリア大陸(もしくはアトランティス)から逃れてきた人間が住みついた、と信じる人々がいるのです。特に1910年代末から30年代初めにかけて、シャスタ山でレムリア人らしき者たちを見たという証言が新聞等で報告され、話題になりました。

この、沈んだ古代大陸とシャスタとを結びつける「設定」は、実はフレデリック・スペンサー・オリバーという人物が啓示を得て書いたとされる、太古のレムリアとアトランティスとが登場する神秘的物語『二つの惑星に住む人』に由来している(1886年までに書かれたそうだが、出版は著者死後の1905年)。ファイロスあるいはフィロスなるチベット人の回想として語られる本作の内容を、事実と見なし喧伝するオカルト信奉者たちがいたのです。

1931年には、薔薇十字思想というオカルト伝統の活動家で、AMORCすなわち古代神秘薔薇十字教団を創設したハーヴェイ・スペンサー・ルイス(1883~1939)が、ウィシャー・スペンリ・セルヴェ(Wishar Spenle Cervé もとの名のアナグラム)との偽名でシャスタ山のレムリア人を題材にした書を出版(Lemuria: The Lost Continent of the Pacific, 1931)。これが、シャスタにはレムリア人すなわち「レムリアン」が住むとか、地下都市があるといった伝説を世にさらに広めるのに貢献しました。オカルト界隈では、アトランティスやレムリアの末裔が地底世界に住んでいるとの主張が今にいたるまでなされています。

そうした系譜に連なるエピソードがほかにも。アメリカの作家リチャード・シャープ・シェイヴァー(1907~1975)は、有名なSF雑誌『アメージング・ストーリー』1945年3月号に掲載された「私はレムリアを覚えている」を皮切りに、超古代文明に由来する地底人の物語を「事実」だと謳いながら次々と発表。数年に渡って肯定的・否定的双方の反響を呼び、『アメージング・ストーリー』の売上は伸びたといいます (野田宏一郎「SF実験室⑩海底大陸始末記」『SFマガジン』1966年5月号、6~10頁、98~99頁。それ以前の海外SFで「失われた大陸」を扱った諸作品についても同論考参照)。

レムリアはその後も、こうしたオカルト思想やフィクション作品を介して受け継がれているのです。レムリアを主な例にしましたが、もちろんアトランティスとムー大陸にも同様の側面があるといえます。

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