「レムリア大陸」というのもある

最終更新日

本サイトで取り上げる、伝説の陸地・文明繁栄地アトランティスやムー大陸と混同されることがあるのが、「レムリア大陸」。ここでは、レムリアについて簡単に解説。

アフリカ大陸東方のマダガスカル島に、「レムール」という名のキツネザルが生息しています。大きな目と、軽快に横跳びして移動する姿が印象的な動物です。童謡『アイアイ』の題材もレムールの仲間。ちなみに「レムール」との呼び名はローマ神話のレムレスという亡霊に由来しています。そのキツネザルの、夜に動きまわる白い姿からイメージされた命名です。

19世紀、このレムールの近縁種が、インド洋によってマダガスカルと隔てられているインドやマレー半島にも生息していることがわかってきたのですが、レムールが自ら遠くまで海を渡り広まったとは考えられなかったので、学者たちはこう推測したのです。昔のインド洋に陸地(=陸橋)があって、今は海で隔てられた土地をつなげており、レムールが広範囲に生息していたが、何らかの変動によって陸地が海に沈んだ。名残の一つがマダガスカルで、それでレムールの仲間が海を越えて分布しているのではないか、と。

こうした想定はレムールへの着目があったことで有名ですが、離れた土地で共通する化石が見つかることもふまえた仮説で、1860年代初頭にこの仮説を提唱した一人が生物学者エルンスト・ヘッケル(1834~1919)でした。当時は権威ある学者たちに支持されたのですが、あくまで仮説であり、100万年前までには消えてしまったという前提で、大陸というよりも「陸橋」として想定されていました。

そして、「レムールの土地」という意味で、この仮説上の陸地に「レムリア(レミュリア)」という呼び名を提言したのが、英国の動物学者フィリップ・L・スクレーター(1829~1913)。この「レムリア」誕生は1864年のことでした。

ところで、のちに判明してくることなのですが、遠隔地に共通の動植物が分布している理由は、いわゆる大陸の移動によって「動植物ではなく陸地の方が離れた」と説明可能です(とても長いタイムスパンで見ると大陸が移動するという大陸移動説→プレートテクトニクス理論が20世紀に発展)。当初、レムリア仮説は合理的に思えたのですが、それによらない理論の発展に伴い、生物学者や地質学者たちの間では「レムリア」は次第に顧みられなくなったのです。

しかし、特にオカルト信奉者たちを介して、レムリアはアトランティスやムー大陸と並ぶ、もしくは先行する「失われた大陸」として捉えられるようにもなります。レムリアは太平洋にまで広がっていた陸地と見なされ、太平洋版のアトランティスあるいはムー大陸と同じような存在としても世に語られていくのです。オカルト文脈における「失われた大陸」はまた別記事でふれたいと思います。

シェアする