プラトンは語る(1)

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ブログというものはあえて雑多に思いついたところを書いて記録していくのがいいとも思っているのですが、あれはもう掲載したっけかなと自身で混乱するところも出てきました。これを書いているのは2022年初頭でもあるので、あらためてのスタートも意識。原点の一つに回帰し、掲載情報の体系化をある程度は整えていく意味でも、「そもそものアトランティス伝説の情報源」をまとめておこうと考えました。シリーズ「プラトンは語る」。

古代ギリシアにおいて直接民主政の制度を最も整え発展した国家が、アテネでした。現代のギリシア共和国の首都でもありますね。そのアテネに生まれた哲学者プラトン(前427~前347)が、宇宙の生成から国家論へと展開していく著作『ティマイオス』と『クリティアス』において伝えたのが、アトランティスです。換算すると現代から12,000年ほど前、大西洋上にあった陸地およびそこに存在したという国家のこと。住民たちは繁栄を謳歌していたのですが、傲慢になり、神罰による地震と洪水でアトランティスは海中に没したといいます。

プラトンが残した著作群は対話篇と呼ばれ、そこではプラトンの師ソクラテス(前399頃~前399)が当時の著名な知識人と繰り広げる対話によって、ソクラテスおよびプラトン自身の思想が展開されています。ソクラテスはじめ実在する人物が登場している場合が多いのですが、対話は架空。プラトンがこうした形式を用いた理由として、著作を残さなかった師について生き生きと語り伝える意図がまずあったのでしょう。初期の対話篇はソクラテスの思想を伝える性格が強いと推測されます。また対話形式には、複数の人々の会話によってわかりやすく、かつ多角的に論じることができる意義も。こうした点も強く意識されたのかもしれません。なおプラトンは対話篇中には直接登場しませんが、次第に著者自身の考えが色濃く反映されるようになるのも理解できることで、後の著作になるほどプラトンの思想が前面に出ていると考えられます。

さて、アトランティスについて語られるのは、プラトン晩年(前350年代)に著された対話篇、『ティマイオス』と『クリティアス』において。これらは、国家はいかにあるべきかという問題を考えていたプラトンが理想的な国について論じた著作、『国家』の続編と位置づけられています。

まず『ティマイオス』冒頭で、アトランティス伝説について簡単に言及がなされています。『国家』での話から、太古に存在した国のことを思い出したと、登場人物の一人クリティアスが言い出し、次いでティマイオスという人物が、世界の創造、人間の成り立ちなどについて語っていくのです。そして国家のあり方を考えるため、歴史がふり返られます。イタリアの人で天文学に詳しいとされる語り手ティマイオスにタイトルがちなんでいるわけですが、他に記録がないので架空の人物と推測されます。

アトランティスについては続く『クリティアス』において詳しい説明が展開。『ティマイオス』冒頭でアトランティスの話に言及し、ここで主な語り手をつとめる「クリティアス」とは、プラトンの母方の曽祖父であるクリティアスと考えられています。対話篇『クリティアス』は、叙述のほとんどがアトランティスの描写に費やされているため『アトランティス物語』とも呼ばれているのですが、その物語は突如中断して未完のまま伝わりました。

この対話の場には、シチリア島の政治家ヘルモクラテスも同席していて、その名を冠した対話篇も構想されていたのは明らか。しかし話は『クリティアス』の途中で終わってしまっています。紀元1世紀の著述家プルタルコスは、プラトンが亡くなったからだと伝えているのですが、実際のところプラトンはその後に別の著作も残しており、『クリティアス』中断の真相は不明といわざるをえません。未完ゆえ、人々の想像力をよけいに刺激してきたのです。→続く…

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