プラトンは語る(3)

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次に、アトランティスの位置等について、対話篇を引用しつつ見ていきます。なお、引用冒頭の「あの大洋」とは大西洋のこと。また、エジプトの神官がソロンに語る叙述なので、「あなた方」とはギリシア人を指します。

…あの大洋にはその入り口――あなた方の話によると、あなた方のほうでは「ヘラクレスの柱」と呼んでいるらしいが――その入口(ジブラルタル海峡)の前方に、一つの島があったのだ。そして、この島はリビュアとアジアを合わせたよりもなお大きなものであったが、そこからその他の島々へと当時の航海者たちは渡ることができたのであり、またその島々から、あの正真正銘の大洋をめぐっている、対岸の大陸全土へと渡ることもできたのである。

『ティマイオス』24E~25A(岩波書店の『プラトン全集』第12巻、『ティマイオス』種山恭子訳 より)

地中海と大西洋の境に位置するジブラルタル海峡の両岸に、ギリシア神話の英雄ヘラクレスが柱を立てたという伝説があったので、ジブラルタル海峡は「ヘラクレスの柱」と呼ばれていました。その向こう側(前方)に存在したとされるアトランティスは、大西洋にあったということになります。

アトランティス島は、リビュアとアジアを合わせたより大きい島だったと伝えられます。「リビュア」とは当時の北アフリカ一帯、「アジア」は小アジアすなわち現在のトルコあたり。古代ギリシア時代、それらの地は半島とも認識され、大きさの想定が曖昧ですので、この記述から正確な大きさはわからないといわざるをえません。ただし後述するように、島内の平野の大きさとして、換算すると東西約532.8キロメートル、南北約355.2キロメートルとの具体的記述があるので、数字をそのまま信じるなら平野だけでもアイルランド島が収まるくらいの広さで、アトランティス全体だとそれより大きいことになります。

また古代には、大西洋を囲むように陸地が存在するという考えがありました。それが、アトランティスの向こう側に「対岸の大陸」があるとの地理観につながっています。

なお、「アトランティス大陸」と言及されることも多く、本サイトでも便宜上「失われた大陸」との表現を用いているのですが、プラトンはアトランティスに「島」(ネソス)という言葉を使っています。

ちなみに、世界史(古代)の用語で「ペロポネソス戦争」という言葉を覚えている方もいるかもしれませんが、これはギリシアの「ペロポネソス半島」という地名のことであり、「ペロプス(という神話の英雄が由来とされる)の島(ネソス)」という意味です。→続く

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