石ノ森章太郎とアトランティス(1)

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執筆中の原稿のためにも、日本で「アトランティス」や「ムー大陸」といった「失われた大陸」を題材にした諸作品を探索・購入・鑑賞中です。手塚治虫と並び漫画文化発展に貢献した石ノ森章太郎(かつて石森表記)の関連作品をあらためて確認しているところを記録しておきます。

1960年から61年にかけて、石ノ森が光文社『少年』に連載していたのが、海洋冒険(SF)物語『幽霊船』でした。海底のアトランティス人と地上の人々が入り乱れて戦うというプロットになっています。とても古い作品ですが、入れ替わる敵味方や善悪、不気味な幽霊船が実は超科学の産物で…、といった目まぐるしい展開や意外性ある設定が印象的な作品。現在は電子書籍でも配信されています。

今後の連続記事で記録していく予定ですが、石ノ森にはアトランティスを設定に取り込んだ作品が複数あります。戦前からすでにアトランティス(や、ムー大陸)の話がけっこう日本に入って来て日本人作家の小説などでも題材にされていたので、石ノ森も幼少時からそうした海洋ロマン設定になじみがあったのではないでしょうか。さらにいえば、そのような流れ、物語イメージの蓄積があってこそ、今の私(1975年生まれ)なんかもアトランティスやムーにノスタルジーを感じるにいたっているのではなかろうかと。

なお、上記『幽霊船』を原作にしたアニメ映画が、東映の『空飛ぶゆうれい船』(1969)でした。こちらは60分ほどの作品で、テンポの良い展開のためという事情もあったのか、アトランティスどうこうの設定はカットされていますが、こちらの映画の方が記憶に残り、原作『幽霊船』も知っている・あとから読んでみた、というような話がネット上では見受けられました。

アトランティスからは離れますが、映画『空飛ぶゆうれい船』は、原作のような二転三転の展開に加え、序盤の怪奇的な演出とそこからの「転回」、みなが飲んでいる(飲むように仕向けられている)「ボアジュース」の背景の悪意にたとえば資本主義へのアイロニーを感じさせるところなど、当時としては前衛的な要素があり、アニメ史における重要作の一つとしてじわじわ語り継がれるようになったのではないかと思いました。

なお、『空飛ぶゆうれい船』は2022年3月現在、Amazon Prime Videoの追加チャンネル、懐かしの特撮ヒーローものやアニメ作品をラインナップした「マイ★ヒーロー」にて視聴可能です(最初に、14日間の無料お試し可能)。

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