マーベルの『エターナルズ』

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現代の神話(アメリカ神話)といえるであろう映画群「マーベル・シネマティック・ユニバース」の一作、『エターナルズ』(クロエ・ジャオ監督、2021年)をDisney+にて鑑賞しました。物語世界、物語の軸が定まっているとはいえ、各作品の監督さんの「色」も必然的に出るわけで、本作は個人的に「ロードムービー」っぽいところを感じました。あと苦悩する者たちの群像劇というか。とにかくマーベル作品の中でも独特な雰囲気があると思います。そこが、『ノマドランド』でアカデミー賞(作品賞、監督賞)を受賞したクロエ・ジャオ監督らしいかなと。

マーベルの神話ネタキャラといえば北欧神話由来の「マイティ・ソー」がすでに有名ですが、『エターナルズ』にはギリシア神話につながるキャラクターが複数いるので覚え書き(管理人は映画のマーベル作品群は大部分見ておりますが、原作コミックにも詳しいコアなファンではございませんので、表層的な知識と理解にまずはとどまっているかもしれませんが、以下についての補足情報や掘り下げた解釈等は気づいたら随時更新していきます)。

ちなみに『エターナルズ』の物語は…
創造主的存在である「セレスティアルズ」によって生み出された神の如き種族「エターナルズ」は、邪悪な「ディヴィアンツ」から地球の人類を守ることを任務として、何千年もに渡り人類を守りつつその発展を導いてきた。 ディヴィアンツを全滅させたが帰還の命がまだ下されないエターナルズは、地球の各地で密かに暮らしていたのだが…というところから展開していきます。

このエターナルズのキャラクターのうち、ギリシア神話が元ネタとして意識されている(作中でもそのような言及がある)のが、イカリスとセナ。

イカリス(Ikaris)は、飛行能力を持ち、目からビームを発射するキャラクター。後述するセルシの元恋人でもあります。キャラ的にDCコミックスの「スーパーマン」と重なるところがありますが(作中でもネタにされてる)、イカリスという名と飛行イメージは、「翼を身に着けて空を飛んだが、太陽に近づき過ぎたことで墜落して死んでしまった」という逸話で有名はギリシア神話の「イカロス」( Icaros, Icarus)。そのイメージの影響はこちらの記事でもふれています。

そして武器の扱いに優れる女戦士セナ(Thena)は、戦いの女神アテナ(Athena)ですね。作中の演者はアンジェリーナ・ジョリー。心を病んでいるキャラで、けっこう印象に残ります。

工芸や技術の神「ヘファイストス」(Hephaistos)が意識されているのが、ファストス(Phastos)でしょうね。ファストスは技術の考案、機械の発明などに優れ、人間にそういった知識を伝えて発展を手助けしてきたとされます。その結果の一つとしての「広島の原爆」に嘆き悲しむという場面が描かれています。

あと、原作の設定等に詳しくないので推測ですが、ものすごいスピードで瞬間移動(DCのフラッシュみたいな)できるマッカリ(Makkari)は、翼の備わったサンダルで素早く移動し神々の使いの役目を果たすマーキュリー(ラテン語でメルクリウス、ギリシア語ではヘルメス)が着想源?。

またそもそも、エターナルズの出身地とされるの星の名が「オリンポス」で、これもギリシア神話の神々が住まうとされた実在の「オリュンポス山」に由来しています。

ちなみに、エターナルズ原作ではマッカリ含めて男性である3人が、映画では女性キャラクターに変わっており、結果的に映画ではエターナルズ10人のうち5人が女性キャラ。またマッカリは聴覚障害者として描かれたり、前掲のファストスは同性愛者として設定されていたり、多様な人種的・文化的ルーツの俳優さんたちがキャスティングされていたりと、昨今の「多様性」(diversity)重視を想起させます。

話は戻って、先述のイカリスの元恋人で物語の中心的人物セルシ(Sersi)は、物質を別のものに変化させる魔法のような力を持つ女性。これはもしかして、『オデュッセイア』に登場する魔女キルケ(Circe)が念頭にあるのかなあと。時間のある時に調べてみようと思っています。

さらに、10人のエターナルズの物語がひとまず終わって映画の「ポストクレジット」(エンドクレジット後のおまけ・エピローグ・次作品への引きみたいな映像)では、「スターフォックス」という新しいキャラクターがチラッと登場するのですが、スターフォックスの元の名前は「エロス」。ギリシア神話の性愛の神で、いわゆる「キューピッド」イメージのもとである神の名です。これらについては別記事でまとめておく予定。

ところでその「スターフォックス」を演じるのが、ハリー・スタイルズ。英国の人気ボーイズ・グループ(ボーイ・バンド)、ワン・ダイレクションのメンバーだったことでも有名です(同グループは2016年に活動休止)。彼は、クリストファー・ノーラン監督の『ダンケルク』(2017年)に出演したことでも話題になりました。ギリシア神話とは直接関係ないのですが、ワン・ダイレクションのメンバーネタは間接的に別記事でもふれる予定。

ここではギリシア神話とのつながりのみに注目しましたが、メソポタミア神話の有名な「ギルガメッシュ」由来のキャラクターも『エターナルズ』には登場。古代神話の再生ですね。

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