古代神話とSF

最終更新日

今回も、以前調べてまとめたことがあった米国での神話継承例(ポップカルチャー)の続き。

大衆文学、コミック、映画などにまたがるアメリカ的ポップカルチャーのジャンルとして、SF(サイエンス・フィクション)が挙げられます。起源について諸説ありますが、アメリカにおいて最も発達したジャンルであるのはたしかでしょう。遥か昔に語られたギリシア神話は、未来を意識するSFにまで直接的な影響を及ぼしているのです。

たとえば、ダン・シモンズの小説『イリアム』(2003年)、『オリュンポス』(2005年)は、数千年先に地球化された火星で神々や英雄たちがトロイア戦争を再現するかのように戦うという設定から物語が展開します。彼のそれ以前のSF小説『ハイペリオン』(1989年)、『ハイペリオンの没落』(1990年)、『エンディミオン』(1996年)も、近代英国ロマン主義の詩人ジョン・キーツなどを介したギリシア神話が着想源です。

そういった文学の知識があるとなおさら楽しめると思いますが、そうでなくてもまず『ハイペリオン』の荘重な世界にふれてみてほしいです。SFに縁遠い人にも『ハイペリオン』がおすすめ。私はサスペンス系でないと小説はけっこう飽きてしまうタイプでしたし、翻訳小説も読みにくく感じることが多くて基本的に苦手でした。しかも小難しい教養も身についていない若い頃に読んだのですが(たしか雑誌での紹介記事で絶賛されており興味をもったので)、巧みな構成の物語と叙情性に意外に引き込まれ、読みふけりました。いまでも強く印象に残っている名作です。

シェアする

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトは reCAPTCHA で保護されており、Google の プライバシーポリシー利用規約が適用されます。

コメントする