トロイア戦争後の物語(2) 続『オデュッセイア』

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ではここから、『オデュッセイア』のあらすじを簡単に紹介していきます。

トロイア戦争後、祖国に帰ろうと航海していたオデュッセウス一行の船は嵐に襲われ、ロートパゴス人の国に流れ着きました。ロートパゴス人は、食べると全てを忘れ夢心地になってしまうという果実、ロートスを食べる者たち。オデュッセウスの部下たちがこれを口にしてしまい、島に留まろうとしたため、オデュッセウスは無理やり彼らを連れ戻して船に乗せ、航海を続けます。

この話から、英語のlotus-eaterとは「夢想家」、lotus landは「まるで夢のような場所」の意の表現。そしてlotus自体は「ハス、スイレン(ロータス)」を意味しています。

その後オデュッセウスらは一つ眼の巨人キュクロプスたちの島に上陸します(オデュッセウスの冒険に登場する土地は想像上の性格が強いが、キュクロプスの島はシチリアに同定されるようになります)。

オデュッセウス一行は、そうと知らずに、キュクロプスの一人ポリュフェモス(ポリュペモス)の洞窟に酒を持って入ってしまいました。そして戻ってきたポリュフェモスによって閉じ込められてしまい、オデュッセウスの部下たちが食べられていきます。

しかしオデュッセウスが酒を飲ませるとポリュフェモスは気をよくし、オデュッセウスの名前を尋ねます。オデュッセウスが「ウーティス」(英語でnobody、「誰でもない」の意)と名乗ると、ポリュフェモスは「おまえを最後に食べてやろう」と言って(全然ありがたくないですが)、酔い潰れ眠ります。

そこでオデュッセウスは残った部下たちと協力し、大きな丸太の先を鋭くとがらせて、ポリュフェモスの眼に突き刺しました。ポリュフェモスの悲鳴を聞きつけて、仲間が集まって来ますが、誰にやられたのか聞かれてポリュフェモスが「ウーティス(誰でもない)」と答えたので、仲間のキュクロプスたちは帰ってしまいました。その後オデュッセウスたちはキュクロプスが飼っていた羊の腹の下に隠れて脱出に成功。

なお『オデュッセイア』では語られませんが、ポリュフェモスには海のニンフのガラテイア(海神ネレウスの娘)への恋のエピソードも伝えられています。美しいガラテイアに恋をしたポリュフェモスでしたが、彼女にはアキスという青年の恋人がいたので、そのアキスを岩の下敷きにして殺してしまったというのです。19世紀フランスの画家ルドンに、『キュクロプス』(1898~1900年頃)という作品があります。この絵では、ポリュフェモスが大きな一つ眼でガラテイアをじっと見つめていて、乱暴なポリュフェモスが不器用ながら一途にガラテイアに思いをよせる様が描かれています。→続く

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