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大地ガイアから生まれたとも、海神ポセイドンの子ともいわれる、巨人のオリオン。オリオン座で有名ですね。

見事な狩りの腕前を誇る美青年ですが、粗暴であったともいいます。

そんなオリオンがキオス島の王オイノピオンの娘メロペに心を奪われ、結婚を申し込んだところ、オイノピオンに両眼をつぶされてしまいました。お父さんやり過ぎ。

その後オリオンは、ケダリオンという男児を導き役とし、太陽の神ヘリオスの光を受けることで視力を回復させたそうな(いや、逆に目つぶれへん?)。

ニコラ・プッサン『太陽を探すオリオン』(1658年、メトロポリタン美術館所蔵。Open Access Artworks, The Metropolitan Museum of Art, New York.)

またオリオンは、自身と同じく狩猟を得意とする女神アルテミスと恋に落ちたとされます。二人は一緒に狩りをしていましたが、これをよく思わなかったのがアルテミスの兄アポロン。シスコンか。

純潔の女神アルテミスが恋をしていることに加え、粗暴なオリオンのことも気に入らなかったのかもしれません。あるときアポロンは、海辺でアルテミスに「あの遠くの的を射ぬくことは、さすがのお前でもできぬだろう」と言います。アルテミスは狩猟の神として見事な弓矢の技を誇るので、すぐさま、遥か遠くに動く何かを射ぬきました。

しかしなんと、射抜かれたのは海上を歩いていたオリオンだったのです!

海神の子ともいわれるオリオンは、自由に海を移動していました…。愛するオリオンの命を自ら奪ってしまったアルテミスはたいへん嘆き悲しみ、オリオンを、天空で狩りを続ける星座にしたといいます(ヒュギヌス『天文詩』2.34)。

ヨハン・バイエルによる星図書『ウラノメトリア』(1603年)に描かれたオリオン座のイメージ(Public Domain via Wikimedia Commons.)

一方で、そもそもオリオンがアルテミスを襲い、怒ったアルテミスが毒をもつサソリを送ってオリオンを殺し、天に上げられてオリオン座と「さそり座 Scorpius」になったという伝承もありました(アラトス『ファイノメナ/天界現象』634以下)。えらい違いですね。天でもオリオンはサソリを恐れ、東からさそり座が現れるとオリオン座は西の地平線に隠れてしまう、と説明されます。こうした話がもともとの形で、恋物語が好まれていく時代(ギリシア神話の全体像ができあがった前5世紀頃よりも後の時代に、そういった傾向が強まっていきます)に、先述のようなアルテミスとの悲恋に変化したのかもしれません(アポロンがサソリを送ったという伝えもあります)。

神話には変化、異説がつきもので、ときに「これが正統」といえない複雑さを生み出していますが、このような様々な異説が豊かな神話世界を成り立たせているともいえるでしょう。

オリオンは、アトラスの娘たちであるプレイアデス(別記事で解説予定です)を追ったとも伝えられます。そして天に昇ってプレアデス星団になった彼女たちは、オリオン座から逃げている(ように見える位置関係にある)というのです。

オリオン座は明るい星を複数含んで見つけやすく、とても有名なので、オリオンという名は天文関係を中心に様々な事物の名称として受け継がれています。

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