ふしぎの海のナディア

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「アトランティス」を設定に取り込んだ日本のアニメ作品の一つ、『ふしぎの海のナディア』。別記事との関連で思い出しました。

『ナディア』は、1990年4月から翌年4月にかけてNHKで放映されていたアニメで、全39話。英題は、Nadia, The Secret of Blue Water。この英題も物語のポイントをついてます。

ジュール・ヴェルヌの『海底二万里』、『神秘の島』を原案とした冒険物語で、総監督が『エヴァンゲリオン』で有名な庵野秀明。第23話から39話までの監督が樋口真嗣(シン・ゴジラの監督としても著名)。キャラクターデザインが貞本義行(これまた『エヴァ』でも知られる大御所)。

『海底二万里』にも海底遺跡としてアトランティスが登場しますが、本作では、アトランティス人(タルテソス王国)が超科学を発展させていたという設定が物語の根幹をなしています。そのタルテソス(タルテッソス)とは、アトランティス同定説もある古代都市・古代王国で、スペイン沿岸部に存在したのでは、と推測されてきました。

庵野秀明をはじめとしたスタッフ、アニメ企画・制作会社ガイナックスについて少しでも知識がある方は、当然のごとく『ナディア』はチェック済みでしょう。欧米、アジア諸国、アラビア語圏でも放映され人気を得て、物語の3年後を描いた劇場版が製作されたり(1991)、ゲーム化されたりと波及しました。本サイトで扱っている話題(ギリシア神話、アトランティスなど)と無関係に、『ナディア』は幅広い年齢層が楽しめる冒険活劇だと思います。

ちなみに、アトランティスを直接のテーマにしたディズニーのアニメ映画が、『アトランティス―失われた帝国』(2001)。『ナディア』と同じくヴェルヌの『海底二万里』を原案としつつ、言語学者マイロ・サッチのアトランティス探索を描く物語でしたが…。こちらが公開された際、『ナディア』などの先行作品と似ている要素があると感じる人が少なからずいたのです。そうした逸話も、アニメに詳しい人はよくご存じかと。

実は管理人は『ナディア』本放送の際に見ておりませんで(当時、高校生)、通して全話鑑賞したのが2007年か2008年頃だったような。日本におけるアトランティス・イメージの受容を考えるためにあらためて見直したいとも思っているのですが、なかなか時間が取れず、そこでたまたま入手したのが小説版。こちらなら仕事の合間に読んでもう少し短時間で物語全体を再把握できるかなと考えたのと、活字文化に興味を深めつつある子どもがもうすぐ手に取って一人で読んでみるかも(読んでほしいな)、と思ったのも購入の理由。絶版ですので古書で手に入れました。

先述のようにいまさらおすすめしたり分析したりするまでもない名作のアニメ版はひとまずおいて、この小説版『ふしぎの海のナディア』(著者:小林弘利、上・中・下巻、徳間書店アニメージュ文庫、1990~91年)も紹介・記録しておきます。

小説版は、アニメではなかなか描写しきれない・伝わりきらないかもしれないキャラクターたちの内面・心情が詳しく文字化されていることで、より共感したり考えさせられたりしながら物語に同化していけるジュヴナイルSF冒険物語。基本的に若年層向けでしょうけれども決して幼稚ではなく、それでいて読みやすい文章。小学校高学年くらいなら、問題なく楽しめるのでは。

アニメにしろ小説にしろ、こうしてアトランティス・イメージは日本でも継承され続けていくことでしょう。無数の実例、これからも実際に確認しながら紹介・記録していきます。

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