ジュール・ヴェルヌ『海底二万里』

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アトランティス伝説の19世紀以前の継承について、いくつかの記事でたどってきました。それを受けてのお話。

欧米においてアトランティス伝説が人口に膾炙し、これまでに増して実在を想定させるようになっていく画期が、19世紀の後半に訪れます。その大きな要因の一つが、フランスの作家ジュール・ヴェルヌの冒険小説『海底二万里』(1869~1870)だったといえるでしょう。

ピエール・アロナックスが謎の人物ネモ艦長に連れられ、潜水艦ノーチラス号で世界中の海を冒険するこの物語では、大西洋海底の場面において、海草におおわれた巨大な列柱が残るアトランティス遺跡が描写されました。

いつの時代も、海が人々の好奇心・冒険心を刺激する対象であることはいうまでもないですが、1870年代に英のチャレンジャー号によって大西洋の海底探査が行われるなど、19世紀後半は人間が科学を駆使して海中の探索を始めた時代でもありました。そのようなときであればこそ、プラトンが伝えていたアトランティスの痕跡が大西洋の底に眠っているのではないか、という期待と想像があったことを、『海底二万里』はよく表しています。

そしてこの作品が古典的名作として継承されつつ、他の諸作品に影響を及ぼしていったことで、アトランティスの名とイメージを世に広め続けることになったのです。

本サイトでも、『海底二万里』に影響を受けた例として『ふしぎの海のナディア』にふれたことがありますが(こちらの記事)、他にも無数にありますので、随時更新していきたいと思います。

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