日本沈没とアトランティス

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2021年10月10日(日曜)より、TBS系にてドラマ『日本沈没―希望のひと』の放映が開始されました。知っている方も多いかもしれませんが、原作は小松左京の小説『日本沈没』(1973)。2度映画化されたほかに、ネット配信アニメとなったり、他の作家によって続編も生み出されたり、今回はドラマ化と、多方面に波及し続けています。

地殻変動によって地震や津波に襲われ、ついには海に沈んでいく日本の大混乱と、奮闘する日本人の姿を描いている原作小説では、大災害で海に沈んだアトランティスと日本とが重ねられており、物語はあたかも現代版アトランティス伝説のような様相を呈していました。

原作が発表された1970年代は、経済成長の陰り、オイルショックによる社会混乱、公害問題、米ソ冷戦によって、安直な進歩史観、科学万能主義への懐疑や反発が世に生じていたのです。そんな中で、本作は進歩のアンチテーゼとして大きなインパクトを日本社会に与えたのでした(この作品の意味については以下も参照。長山靖生「小松左京『日本沈没』の意味」一柳廣孝編『オカルトの帝国―1970年代の日本を読む』青弓社、2006年、37~58頁)。

そして今、いうまでもないことでしょうけれども特に東日本大震災以降、災害がよりリアルなものとして感じられるようになっている時勢のもと、日本沈没という物語が再び脚光を浴びるのは必然なのでしょう。

災害をますます意識せざるをえなくなった日本でこそ、アトランティス伝説もまたあらためて関心を抱かれるのではないか、ということについても機会をあらため述べたいと思います。

さて本題のTBS版『日本沈没』は、かなり力の入ったドラマだと感じました。初回は小難しいこと抜きに多くの人が引き込まれたのでは。今後も鑑賞したいです。未曽有の危機に直面する日本は、本作においてどう描かれていくのでしょうか。繰り返しになりますが大災害というのが今の日本にとってこそ本当にリアルな題材なので、現実をどのように意識した脚色がなされていくのか、気になります。

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