本サイトでの「神話」とは

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 誰もが「神話」という言葉を知っているでしょう。ですが、その「神話」とは何でしょうか。この問いに、誰もが合意する唯一の正解はあるのでしょうか。したり顔で小難しい定義をこねくり回す研究者をあざ笑うかのように、「神話」は学問分野の境界を侵食しつつ、一般社会においても様々なかたちで受け継がれ続けています。逆説的ですが、簡単な定義で捉えきることができない広がりこそ、人間にとっての「神話」の絶えざる重要性や影響力を示していると思います。またそれゆえ、「神話」について問い続ける意義がある、とも。

 もちろん、「神話」を捉えることが不可能だといいたいのではありません。ひとまず本サイトでは、辞書的な説明と一般的な捉え方とを考慮しながら、以下のような意味合いを念頭に置いています。

「神話」は、日常を時間的・空間的に越えたところを舞台に、神々や優れた人間たる英雄が登場し、何らかの超自然的要素を伴い、驚異的な出来事を伝えたり事物の由来や原理について説明したりする物語、および関連イメージのこと。

ただし、こうした諸点の全てに合致することが必要条件というわけではなく、部分的にしか該当しない場合も排除はしません。

そして、これらへの該当の程度は別として、ある集団や文化のもとで長らく受け継がれてきた、もしくは受け継がれうるような物語・イメージを(ときに比喩的に)意味してもいます。

また神話は、特に現代では虚構との前提で考えられる傾向がありますが、古くは語り手にとって必ずしも虚構とされていません(世界観や信仰のもとに正しいと考えられたり、真偽を超越していたりする)。

解釈する側においても、神話の少なくとも中核に何らかの事実があると信じたり、事実をそこに見出そうとしたりする者が、昔も今もいます。

そうした事実性といったときには、明確に実在した、もしくは実在したと信じられているような人間や事物について、長らく言い伝えられる話を意識した「伝説」との表現もありますが、ここではそれも包括して「神話」と表現する場合があります。

 「神話」という言葉は、古代ギリシア語で「物語」などの意味があった「ミュートス」に由来しています。英語での myth という表現も、ミュートスからきています。ミュートスという言葉の変遷や、いつどうして日本語で「神話」という訳語があてられるようになったのかなども、別の機会に整理してみたいです。

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