志向されるギリシア神話(2)

最終更新日

映画といえば、近年は、アイアンマンやバットマンといったコミックに由来するアメリカン・ヒーローが、映画界を席巻してきました。各々のキャラクターたちの世界観が連結され、マーベル・コミックスのキャラクターたちは「マーベル・シネマティック・ユニバース」(MCU)、DCコミックスのキャラクターたちは「DCエクステンデッド・ユニバース」という「世界」を形成して、クロスオーバーした作品が続々と製作されています(もともとコミックにおいてそうした展開があったわけですが、やはり近年の映画やドラマによってこそ、そうした世界観・作品群が広く知られるようになってきたといえるでしょう)。

そもそも、アメリカン・コミックの最初のヒーローはスーパーマンであるが、その原作者ジェリー・シーゲルの着想源の一つは、ギリシア神話の英雄ヘラクレスだったといいます。

また、2016年公開の映画『バットマン vs スーパーマン:ドーン・オブ・ジャスティス』においてバットマンを演じたベン・アフレックは、本作について語るなかで、「アメリカ神話=(バットマンのような)スーパーヒーローの物語」をギリシア神話になぞらえて表現したことがあります(http://movieweb.com/ben-affleck-talks-about-palying-the-dark-knight-in-batman-v-superman/ 2018年に閲覧後、現在はリンク切れなので、発言記録を再度確認中)。

彼は脚本家、監督、プロデューサーでもあり、監督としてアカデミー賞も受賞(2012年公開の『アルゴ』で作品賞)するなどハリウッド映画について知り尽くしている人物なので、その意見には説得力があるでしょう。

超越的存在と人間との間で奮闘し、思い悩むヒーロー像と、ギリシア神話の半神たる英雄たちには、強い親和性があると思います。そもそも、「ヒーロー hero」の語源がギリシア神話における英雄「ヘーロース」であることも思い起こされるでしょう。ギリシア神話なくして、アメリカン・ヒーローの物語はなかったかもしれません。創作者たちは、現代にギリシア神話のようなものをあらためて生み出そうとしているのです。

アメリカン・ヒーローの物語をめぐる状況も該当するでしょうが、ファンも参画して設定や解釈など含めた作品世界が広がっていくような物語・イメージ群が、ポップカルチャーの発展した現代では増えています。物語とイメージの大量消費の時代に創作者もまた増えています。こうした想像の世界の展開を2000年前から見せてきた先行例たるギリシア神話こそ、今後も様々な形で参考にされ続けるのではないでしょうか。→続く

シェアする

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトは reCAPTCHA で保護されており、Google の プライバシーポリシー利用規約が適用されます。

コメントする