世界の成り立ち(3) クロノスからゼウスへ

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ティタンのクロノス

ティタン神族のクロノスは、姉のレア(レイア)を后として、世界に君臨します。しかしクロノスはガイアとウラノスに予言を告げられていました。それは、父と同様にクロノスも子に王位を奪われるというもの。予言を恐れたクロノスは、レアとの間に生まれてきた子たちを次々に飲み込んでしまいます。

古代ローマ人は、古い世代の神クロノスを「サトゥルヌス」という古の農耕神と同一視していました。スペインの画家ゴヤのたいへんおどろおどろしい絵画『我が子を食らうサトゥルヌス』は、この物語を描いています。サトゥルヌスは英語で「サターン」、すなわち土星のことで、土曜日 Saturday の呼び名の由来。

またローマでは、冬に七日間にわたってサトゥルヌスの祭り=サトゥルナリアが開かれました。人々は見世物を楽しみ、贈物を交換しあったといいます。この冬の祭りが「クリスマス」の原型の一つという解釈もあるのです(いずれ別記事で詳しく扱いたいと思います)。

なおクロノス Cronos は、古代ギリシア語で「時」がクロノス Chronos(「時の」という意味の chrono-の由来)だったことから時の神とも見なされ、時間に関する事物の名称にも用いられることがあります。

ゼウスの登場

ティタン神族と争い、覇権を握ったとされるのが、ゼウスを筆頭とするオリュンポス神族です。ギリシア神話の中心的存在である、彼らの成り立ちを見ていきましょう。

我が子を次々と夫に飲み込まれて嘆き悲しんだレアは、ゼウスを身ごもるとクレタ島に行き、生まれたゼウスを隠して、布で包んだ石を赤子と偽ってクロノスに渡しました。クロノスは疑わずにそれを飲み込みます。

そしてゼウスは密かにニンフ(自然界の精霊)によって育てられました。このニンフの名はアマルテイアといって、飼っていた牝山羊の乳をゼウスに飲ませたと伝えられます(あるいはアマルテイアが山羊の姿をしていたとも)。その山羊の角が折れ(ゼウスが折ったとの伝えもある)、果物や花があふれるようにそこから生じてくる不思議な角として受け継がれました。この「アマルテイアの角」はラテン語で「コルヌコピアエ」(「豊穣の角」の意。「豊穣」の意のコピアは「コピー」の語源)といい、豊かな実りの象徴表現として用いられるようになり、米国では秋の感謝祭のシンボルになっています。

成長したゼウスは、父クロノスに薬を飲ませ、それまでに飲み込まれた兄弟たちを吐き出させました。飲み込まれていた者たちも、そもそも不死の神々だったからか、父の体内で生き続けていたのです。

こうして、ヘラ(ゼウスの妃となる)、ヘスティア、デメテルの三姉妹と、ポセイドン(ゼウスの兄、弟とする伝えも一部にある)、すでに言及したアフロディテ、さらにゼウスとヘラや他の女神との間の子(ホメロスによるとアフロディテもゼウスとティタン神族の女神ディオネとの娘)が加わって、オリュンポス山に居場所を定めた神々が、オリュンポスの12神です(ゼウスの兄弟の一人ハデスは、地下の冥界の神なので12神には入っていない。別記事で解説)。

オリュンポスは標高2917メートルのギリシアで最も高い山です。人々は最高峰に神々が住んでいると想像したのでしょう。日本では光学機器メーカーの名「オリンパス Olympus」としても知られています。→続く

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