ヘスティア/ウェスタ かまどを守る女神

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ヘスティアはゼウスの姉で、オリュンポス12神でありながら、目立ったエピソードのない女神。地味系女子、というより真の地味。というのも、彼女は家の「かまど(炉)」を守る女神だったので、必然的にアクティブなエピソードと結びつきにくいのです。

また「かまど」は神聖、不可侵なものと捉えられ、彼女もそうしたイメージで思い描かれていました。他の神々に求婚されたこともあったのですが、彼女はそれを断ったように、永遠の純潔を守り続ける女神なのです。

印象的な神話をもたない彼女に代わり、ゼウスの子で酒神のディオニュソスがオリュンポス12神に数えられるようになっていきました。それでよけいに目立たない存在に…

ヘスティアは、ローマでは同じくかまどの女神であるウェスタ Vesta と同一視されました。こちらでは少々注目すべき存在となっております。他の神々のような活動的な逸話はないにしても、かまどは家の中心だったので、彼女は家庭の守護神として崇められました。さらに国家は家庭の延長として成り立っていると考えられたので、国家統合の神としても重視されたのです。

ちなみにラテン語でかまど(炉)は focus。これが「中心、焦点」の意のフォーカスの語源。現代でもヘスティア/ウェスタは、家庭や住居、かまどに関係する事物の名称などとして受け継がれています。

なお、ローマの創建伝説には「ウェスタの巫女」が関わっていますので、それについてはこちらの記事をご参照ください。

ところで、「地味」なこの女神をふと記録しておこうと思ったのは、とある企画でお世話になっている編集者さんが「かまど守って動かない神様ってめっちゃおもしろくないですか!なんだそれって!」とウケていたからです。なるほど、ギリシア神話について初めて知る人なら特に、そんな反応もあるのかと感じた次第でした。

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