ロムルスとレムス Romulus and Remus

最終更新日

こちらの固定ページでもふれているように、ギリシア神話に吸収されがちだが独自の要素も有しつつ、ギリシア神話継承に影響を及ぼした「ローマ神話」というカテゴリーも独立で設けるべきかなと思いました。そのカテゴリー独立にも合わせ、神話継承事典の更新として取りあげるのが「ロムルスとレムス」、ローマ創建の神話。

神話・イメージ

のちに都市ローマが誕生する地域、ラティウムの王家の兄弟、ヌミトルとアムリウスが争い、弟アムリウスが兄から権力を奪って独裁者となりました。そしてアムリウスはヌミトルの一人娘レア・シルウィアを、女神ウェスタの巫女にします。巫女は婚姻が許されないので、これで兄の血筋を断絶させようと企てたのです。

※なお、ローマ創建神話については、古代の書物、プルタルコス『ロムルス伝』、オウィディウス『祭暦』、リウィウス『ローマ市建設以来の歴史』など参照。いずれも日本語訳あり。

しかしそのシルウィアを見初めたのが、軍神マルス(マルス Mars はギリシア神話のアレスに対応し、基本的には同一視されますが、本来は別の神だったので詳しく見れば異なる要素も多々あり)。

シルウィアはマルスによって双子ロムルスとレムスを授かります。アムリウスは神の子と認めず、王位を継ぎうる子たちを捨ててくるよう召使に命じました。その召使は、赤子を籠に入れて川岸に捨てたのですが、川が増水して逆流すると籠は上流まで運ばれました。

(死んだと思われた赤子が実は生きながらえて…という、よくある逸話。ギリシア神話だとオイディプスとか。)

そこで双子を助けたのが、マルスの使いたる雌の狼。二人は狼に乳をもらって生きのびたのです。そして羊飼いファウストゥルスが双子を拾い、その妻に育てさせたのでした。

ロムルスとレムスと名づけられて二人は成長します。あるとき、弟レムスがヌミトルの家畜を奪おうとしてヌミトルのもとに捕らえられたことから、双子は自分たちがヌミトルの孫であると知りました。そしてロムルスはアムリウスに敵対する者たちを率いて王宮へと攻め入り、これを討ち取ります。二人は祖父であるヌミトルに国を任せることにし、新たな地に自分たちの国をつくることにしたのです。

双子は人々を率いて近隣の土地に移りました。しかし、新しい国の中心をどこに定めるかで、二人は対立。レムスの挑発に怒ったロムルス(またはその部下)が、レムスを殺してしまうのです。ロムルスはレムスを埋葬し、「パラティヌスの丘」に都市の建設を進めていきます。

ロムルスは都市を完成させると、自分の名から「ローマ」と名づけたといいます。

(今回はまだ詳しく述べませんでしたが、ロムルスとレムスはギリシア神話における「トロイア王家」の末裔とされています。今回述べたようなロムルスとレムスの話がおそらくがローマ固有の建国神話であったと思われますが、ギリシアとの文化的交流を背景にギリシア神話との「連結」がなされたのでしょう。そこで選ばれたのがなぜ「トロイア王家」だったのかはまた別項でいつか記録・解説したいと思います)。

継承(事例は随時更新)

絵画:幼いロムルスとレムスを拾い育てた羊飼いの夫婦、ファウストゥルスとアッカ・ラレンティアも描かれる絵画。ルーベンス『ロムルスとレムスの発見』(1612-13年、カピトリーナ絵画館)、ピエトロ・ダ・コルトーナ『ロムルスとレムスの発見』(1643年頃、ルーヴル美術館)など。

グイン・サーガ:栗本薫(1953~2009)の大河ファンタジー小説『グイン・サーガ』の、難を逃れた双子が助けを得ながら親族とも戦い王国を再建する、といった展開はローマの建国伝説に重なる。主要登場人物の一人、レムスの名もローマ神話からだろう(双生の姉がリンダ。二人は「パロ」の王族)。ちなみに双子を救うのが狼ならぬ豹頭の超人で、物語の主人公たるグイン。また同作には、他にも人名や地名、世界観に古代ローマ(イタリア)を意識したと思しき要素が垣間見える。

レムス:英語でリーマス Remus。 狼や双子をイメージさせる名称。前掲『グイン・サーガ』の主要人物、レムスの名もおそらくここから。『ハリー・ポッター』に登場する「人狼」、リーマス・ジョン・ルーピンの名も狼つながりだろう。

ローマのシンボル:ロムルスとレムスが狼に乳を与えられ助かったという逸話から、狼の乳を吸う双子の姿がローマ市の紋章に描かれるなど、ローマのシンボルとなっている。

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