アレス/マルス 軍神とローマと火星

最終更新日

アレスとマルスはえらい違い?

アレスはゼウスとヘラの子で、激しい気性の軍神。オリュンポス12神の一員ですが、アフロディテの愛人としてのエピソード以外、目立った逸話があまりないのです(※ハリロティオスやアロアダイと関わるエピソードは、いずれ付け足そうと思っています)。しかしアレスはローマではマルスという神と同一視され、こちらはローマ人によってたいへん重視された神で、戦に臨む雄々しい若者の姿でイメージされました。

ローマ時代に定められた月の呼び名が多くの言語で受け継がれていますが、たとえば英語の3月 March は、「マルスの月 Martius」 に由来。春は戦争の始まる季節でもあったので、軍神の呼び名がつけられたのでしょう。形容詞 martial(戦争の、軍人らしい)もマルスから。またヨーロッパ諸言語の人名マーク、マルクス、マルコ、マルセル、マーティン、マルタン、マルティネスなどは、全てマルスから派生しています。

先述のようにアレス/マルスは、アフロディテ/ウェヌスの愛人だったので(二人の不倫がバレる話については、こちらを参照)、後世に二神がよく一緒に描かれました。実はそこには、戦の神も愛の女神と共にあれば穏やかである、戦乱は愛によってこそおさめられる、というメッセージがあったといわれます。

パオロ・ヴェロネーゼ『愛に結ばれたマルスとウェヌス』(1570年代。Open Access Artworks, The Metropolitan Museum of Art, New York.)

火星のイメージ

アレスは火星と同一視され、ローマ名のマルス Mars がマーズすなわち火星を意味する英単語になっています。赤く輝く火星は戦火を連想させるのでしょうか。西洋以外でも火星には戦いのイメージがあります。そして火星といえば、火星と同様に赤く輝いているさそり座のα星はアンタレスと呼ばれますが、これはアンチ・アレス、すなわち「アレスに対抗するもの」という意味。

ハルモニア

アレスと愛人アフロディテとの娘がハルモニア。アレスの泉の番をしていた竜を殺したカドモスという英雄(ギリシア中部の町テバイの創建者)が、その償いとしてアレスに仕え、のちゼウスによってハルモニアを妻として与えられたのですが、それはかつての争いの調和をはかる結婚でした。このハルモニアという名が「調和」の意、ハーモニー harmony の語源です。

シェアする

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトは reCAPTCHA で保護されており、Google の プライバシーポリシー利用規約が適用されます。

コメントする