世界の成り立ち(4) 神々の世代間闘争

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ゼウスをリーダーとしたオリュンポスの神々は、彼らの親を含むティタン神族に戦いを挑みました。この戦いを「ティタノマキア」といいます(マキアは「戦い」の意)。

争いは10年にわたって続きますが、ゼウスらは、冥界の最下層タルタロスに閉じ込められていた先述のキュクロプスとヘカトンケイル(こちらを参照)を解放して味方にしました。このとき、火を扱い鍛冶に優れるキュクロプスによって、ゼウスは雷光、ポセイドンは三叉の矛、ハデスはかぶると姿を隠せる兜という、それぞれの象徴となる物を与えられたといいます。この助力もあって、ゼウスたちは最終的に勝利しました。

ティタン神族はタルタロスに幽閉され、ヘカトンケイルが牢番となります。ただし、後述の巨人族との戦い後にティタン神族は解放されたとの伝えもあるように、ティタンとその子孫はその後も神話に関わってきます。

さて、オリュンポス神族が世界を支配する時代の到来です。ただし戦いはまだ続きました。ゼウスたちは、ガイアから生じた巨人族ギガスとも戦います(ギガントマキア)。人間の協力がなければゼウスたちは勝利できないと予言されていたので、ゼウスと人間との間に生まれた英雄ヘラクレス(別記事でいずれ詳しく解説)を味方に引き入れました。ヘラクレスの弓矢による支援もあって、オリュンポス神族はギガスを全て倒すことができたのです。

このギガスという言葉が、基礎となる単位の10億倍を示すギガ giga や、ジャイアント giant といった表現につながっています。ちなみに1000倍を示す「キロ」は「キリオイ(1000)」、100万倍を示す「メガ」は「メガス(大きな)」、1兆倍を示す「テラ」は「テラス(驚異、怪物)」という古代ギリシア語に由来。

さらにオリュンポス神族の前には恐ろしい敵が現れます。それは、大地から生じたティタン神族とギガスを打ち破ったオリュンポス神族に怒った大地ガイアが、タルタロスと交わって生み出した怪物、テュフォン(ティフォン)。巨体で、翼を備え、腿から上は人間だが、腿から下は巨大な蛇、肩からは100の蛇の頭が生えているという怪物です。「タイフーン」(typhoon)の語源という説もある、暴れたら手がつけられないこの怪物に、オリュンポスの神々も苦戦しますが、ついにテュフォンをシチリア島まで追いつめ、エトナ火山の下に封印したと伝えられます(アイスキュロス『縛られたプロメテウス』363行以下)。

ここに至りガイアもゼウスたちを認め、オリュンポス神族の支配が確立したのでした。

この神々の世代間闘争の背景には、先住民と侵入民の争いという歴史的出来事があるのではないか、と推測されています。ギリシア人の先祖は、前2000年頃に当地にやってきた人々ですが、ティタン神族やギガス族が先住民を、オリュンポス神族が侵入民たるギリシア人を象徴しているのではないかとの解釈です。この話がそうした「事実」をどれほど反映しているか、はっきりとはわかりませんが、いずれにせよこの神話の成立には、親を超える子供、それを恐れる親という、普遍的なイメージが大きく影響しているのではないでしょうか。

→続いて、主だった神々の個別紹介をしていきます(随時更新中。たとえばゼウスについてはこちら。また、オリュンポス12神の概略についてはこちら。)

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