ゼウス/ユピテル 天空の最高神(1)

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神々の成り立ちについて、簡単にですがまとめてきたところで、次に主だった神々についての個別解説を、少しずつですが整理していこうと思います。まずは、神々の長たるゼウスについて。ここから数回の記事に分けてその物語やイメージを解説するつもりですが、本サイトの肝でもある、神話イメージの継承例(ゼウスの継承例)はさらに別にまとめて整理しようとも思っています。

「最高神」だけれど…

ゼウスは、大地と天空が生んだ神クロノスの子で、ギリシアの最高神。ローマではユピテル Jupiter、英語ではジュピターと呼ばれ、太陽系最大の惑星である木星に重ね合わされました。ラテン語ではオプティムス・マクシムス Optimus Maximus、すなわち「最高の存在」とも呼ばれます。

Fragment of a terracotta skyphos (deep drinking cup)
ca. 430–400 B.C. (Open Access Artworks, The Metropolitan Museum of Art, New York.)

豊かな髭をたくわえた威厳ある姿でイメージされ、神々の長として王杖を持ち、天空の神として雷を操り、空の支配者たる大鷲が象徴。鷲は勝利の象徴にもなりました。

しかし最高神とはいえ、絶対的支配者ではなく、妻のヘラにやり込められることもあります。そういった点が、一神教の唯一絶対の神とは異なる、多神教の古代神話の面白いところ。

女好きのゼウス

ヘラという正妻がいながら、ゼウスには浮気によって生まれた子が数えきれないほどいます。ヘラクレスやペルセウスなど有名な英雄は、ゼウスが見初めた女たちとの間に生まれた子です。

こうしたイメージには実は深い理由があると推測されています。

ギリシア人たちが先住民とも融合しながら統一的な宗教的世界観を形成していく過程で、各地で崇められていた神・女神や名家の先祖が、最高神ゼウスに結びつけられていったと考えられます。

つまり「女好きゼウス」の背景には、土着信仰の統合、名家の血統の権威づけといった実際的な事情があるのです。

また正妻ヘラは先住民の女神に由来するとの見方も。つまり侵入民族のギリシア人が、自分たちの主神と、もっと以前からギリシアの地で崇められていた重要な女神とを、宗教統合のため結婚させたのではないかとの推測です。根底において実は対立的な神なので、両者はある意味で夫婦仲がよろしくないのだ、というのは想像をはたらかせすぎかもしれませんが…。

次の記事に続きます

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